○結婚出産後、工場のパートに行ったところ、仕事が遅い、手順が悪いなどと注意され怒られました。

そんなことが続くと、自分はどうしてこんなにできないのだろうとだんだん落ち込みいやになってきました。結婚前は腰掛のような仕事で若くてかわいければ、ミスなど大目に見てくれました。

ある日、知的障害の高校生の実習が入り、教えられている様子を見て、注意されている内容が自分と同じだと思いショックを受けます。次第に落ち込み、メンタルクリニックに受診したところ、ADHDと言われ、本人は二重にショックを受け、これまでの自信がぼきっと折れたようでした。

これまでのことを振り返って、「(こうなる前までは)精神的に最強でした」と言いました。

〔仕事上で否定的な評価を受け続け、うつ的になり精神科を受診し、発達障害がわかる場合も多いです。発達障害の傾向がある人は、他者や外部に対しての認識が弱いので、自分に対しあまり疑問を持たず、自己完結している場合が多いのですが、否定され、それを受け入れざるを得ない時にはきびしいうつ的な状態になります。

自分から気がつく場合も、周りの反応から気がつく場合も、自己完結しているものが崩れる時にはうつ的な状態になります。うつ的な状態で受診し、発達障害がわかることが多いです。そのためか、注意されたり批判されたりすると、ものすごい勢いで自己弁護する人もいます。やさしくていい人だという思いもすべて吹っ飛ぶくらいの剣幕です。意識していなくとも、自己完結しているものが崩される危機感からなのかもしれません〕

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『“発達障害かもしれない人”とともに働くこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。