殺されかけた三人で罰を決めろよ!

「お前、どういうつもりだ」
早坂は岩崎を睨みつけた。

「個人的には貴様のことなぞ百万回殺しても飽き足らないさ」岩崎は冷静そのものだった。「俺たち三人はイマイ村でじっくり考えたんだ。法律の無い笹見平に秩序をつくるために、自分たちの件を通して問題を整理してみた」

「秩序だと? そんなもの、俺がちゃんと作っていたじゃないか。お前たちがいない間、ここは非常によく治まっていた」

「ばか野郎」盛江が怒鳴った。「人を殺そうとしておいて、何が秩序を作った、だ。お前の秩序の下で俺たちが実はどれだけ頭を押し下げられていたか!」

岸谷が口を開いた。
「盛江、落ち着け。みんな、聞いてくれ。現実に俺たちの間で傷害事件が起き、笹見平に暴力と不安がもたらされた。この件はしっかり裁かれる必要がある。だけどぼくら三人は被害者で当事者だから、それができない。みんなの中から公平な第三者を選んで、裁判官をやってほしい」

若者たちは静まり返った。早坂は憮然とした表情をしていた。沼田は眼鏡が曇っていた。

川田が立ち上がって言った。
「そんなの無理っすよ。みんなこの世界に来て、良くも悪くも兄弟みたいになっている。そりゃ、二人のやったことは赦されないし、死刑にしてもいいと思うくらいです。けど、メンバーの中にこの二人のシンパがいたら……裁判官になって判決を下し、シンパに恨まれたら、第二の事件を引き起こしかねません」

「裁判官は一人でなくてもいいと思う」砂川が言った。「裁判員制度にしたらどうだ。それなら恨みも呵か責しゃくもひとりで引き受けなくて済む」

「おいおい」盛江がしびれを切らして言った。「そんな面倒をしなくても、殺されかけた三人で罰を決めろよ。それなら誰も文句はないよ。恨みも呵責も、当事者同士で片がつく」

そうだそうだ、と声が掛かった。多くの若者が盛江の考えに賛同した。裁判のような面倒な手続きを踏まず、自分たちと無関係なところで話を付けてもらいたい。川田の言う通り、あとから恨まれたり、報復を受けたりするのは嫌だった。