但し、この場合においては法第20条の本文の規定により、原則として死亡後改めて診察をしなければならない。法第20条但書は、右の原則に対する例外として、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に限り、改めて死後診断しなくても死亡診断書を交付し得ることを認めたものである。

2 診療中の患者であっても、それが他の全然別個の原因例えば交通事故等により死亡した場合は、死体検案書を交付すべきである。

3 死体検案書は、診療中の患者以外の者が死亡した場合に、死後その死体を検案して交付されるものである」と述べる。

このような医師法第19条2項、第20条に関する解釈の影響を受けて、医師法第21条にいう『検案』とは、死体検案書を交付すべき場合に死体を検案した場合に限られるとする趣旨の見解が見られた。原判断も、「診療中の傷病以外の原因で死亡した疑いのある異状が認められるときは、死体を検案した医師は医師法第21条の届け出をしなければならない」と説示しているところからすると、このような見解の流れに立つものと思われる。

これによれば、当該事例が、死亡診断書を交付すべき場合か、あるいは、死体検案書を交付すべき場合かをまず決すべきことになるが、実際問題として、その死亡の時点でこれが必ずしも客観的に明らかでないこともあり、また、医師がその判断に迷うこともあると思われる。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『死体検案と届出義務 ~医師法第21条問題のすべて~』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。