医療者と患者・家族の信頼関係が崩れたら医療の外」の問題である。

まさしく、WHOドラフトガイドラインのいう「学習を目的とした報告事業制度」(医療安全の制度)であり、再発防止のための仕組みである。医療者と患者・家族の信頼関係が崩れた場合、患者・家族が納得しない場合は、もはや、「医療の内」の問題ではない。紛争状態即ち「医療の外」の問題である。

この場合は、医療者の権利を考慮しつつ法律関係者の助言を得ながら、ADR、裁判、無過失補償制度(過失・無過失を問わない患者救済制度と考えており、訴訟制限とセットにすべきものと考えている)等の解決策をさぐるべきである。警察が関与する事態はもちろん「医療の外」の話であり、故意に限りなく近い、犯罪性を有する場合である。

従って、アドバイザー、顧問、オブザーバー等の人選についても、「医療の内」の部分、即ち、再発防止のための取り組みの部分は医療者主体であり、「医療の外」すなわち紛争部分については、弁護士等の法律家等が該当すると考えた。

「医療の内」に法律家を入れるということは、事態の紛争化につながる。もちろん、「医療の内」と「医療の外」は、明確に線引きされるわけではない。「医療の内」の解決過程で紛争化する場合もあり、紛争解決への過程で、相互理解を得て、「医療の内」で解決に至る場合もあろう。これらのグレーゾーンを(図)では、「医療の内」と「医療の外」の間の帯状の境界域で示した。

[図]基本的な考え方(日本医療法人協会原案)
※本記事は、2018年12月刊行の書籍『未来の医師を救う医療事故調査制度とは何か』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。