そんなに急いているなんて、お前、もう病気だな。

「無理を承知でそこを何とかする方法はないか? まずは、ポルトガルと英国だ。それと……フランス、イタリア……。加えてロシアとかは? ラファエル前派に興味があった者か、それと関係する位置にいた者とか。何々会、何々派、何々協会などに登録している画家達を網羅している名鑑を調べるとか。有名美術学校の卒業者とかはどうだ?」

「おいおい、宗像、いったいどうしたんだ? 冷静ないつものお前らしくないぞ。該当する画家が何人出てくるかも分からん話だ。数十人か、それとも数百人になるかもしれん。それに、たとえリスト・アップできたとしても、どうやって連絡をつけるのだ? 本人をどう確認するのだ? 名簿などには一切出ていない孤高の画家かもしれんし、偽名の可能性もある。気の遠くなるような話で、無駄骨は自明の理だぞ!」

「分かって頼んでいる。一生の頼みだ」

「そんなに急いているなんて、お前、もう病気だな。うーん困った。しかし……仕方ない、駄目元でひとつやってみるか。ナショナル・ギャラリーのモーニントン女史にでも頼んでみるよ。ところでお前、デジタル・カメラを持ってきたか? もし持ってきているなら全ての絵を撮って、すぐこちらへ転送しろ。持っていなければ、どこかで借りてでも撮れ。それが最低条件だ。いやー、宗像、お前は人使いの荒い奴だ」

「写真は既に撮ってあるよ!」
宗像は言葉を返した。