紫色の菜の花の知られざる歴史 平成二十二年五月十七日掲載

最近どこに行っても見かける花があります。紫色の菜の花、標準的な和名はオオアラセイトウ。別名ムラサキハナナ(紫花菜)、ショカツサイ(諸葛菜)、ハナダイコン(花大根)、シキンソウ(紫金草)と沢山の呼び名があります。

山口誠太郎という人が、南京大虐殺の行われた紫金山の麓に可憐に咲いていた「紫色の菜の花」の種を密かに日本に持ち帰り、戦争で命を奪われた人々への鎮魂と平和を願ってこの花を紫金草と名付けました。私はこの花が陽光に照らされて紫、時に金色っぽく光って見えるのでその名が付いたと思っていましたが全くの誤解でした。

その後、山口氏は茨城県の自宅の庭で種を増やし、この花を日本中に拡げて行きました。一九八五年の筑波科学万博では百万袋の紫金草の種が配布されました。紫金草は中国の南京ゆかりの花であり、日中戦争時の悲惨な経験を繰り返してはならないという願いを込めて、平和の花(PEACEFLOWER)と呼ばれるようになりました。

日本でも絵本『むらさき花だいこん』が生まれ、「紫金草物語」が作詞作曲され、「紫金草合唱団」までもが設立されました。故事や物語があるこの花をぜひ平和の花「紫金草」という名で広めたいものです。

* この文章について高崎の方から感謝のお手紙をいただきました。知り合いの方が描かれた花の名前とその由来や歴史を知って、病院の待合室にその絵と共にこの文章を置かせてもらいましたとのこと。本当に嬉しい限りです。

美しいカメムシと出合う 平成二十二年九月二十二日掲載

先日、マリーゴールドの葉に直径二センチ位で、全体が葉の保護色のような深緑色で赤い筋模様があり、一部が金色で玉虫を思い起こすほど見事に輝く虫に出合いました。その姿形からカメムシの一種だろうということだけは想像できました。

ネットで検索してみると次々に驚きの事実が判明しました。このカメムシは昭和六十一年発行の日本の「昆虫シリーズ」の切手の図案に採用された、日本のカメムシの中でも特に美しいとして有名なアカスジキンカメムシ(赤筋金亀虫)でした。

日本で切手になったカメムシは本種だけですが、世界中では様々なカメムシたちが切手になっている事実にも驚きました。後日、鮮やかさを失った死骸を見つけ、更に黒光りの体に白い筋模様がある虫を見つけたら、似ても似つかぬこれが赤筋金亀虫の幼虫でした。

この種はあまり臭くなく、フルーティな匂いがするという記述もあり、身近な場所にも生息しているそうです。You Tube にも登場する ”歩く宝石” と形容されるこの虫を実際に見れば、きっとカメムシのイメージも変わることでしょう。カメムシ同様、人に対しても偏見を捨てられたら、いじめや差別が無くなるかもしれません。

金星と三日月に新年の願いを 平成二十三年一月九日掲載

昨年は日の出前の西の空に、元日史上初の部分月食でスタートしました。今年は日の出前、上毛大橋から見て県庁の真上に暁(明け)の明星と言われる金星と三日月(正しくは二十六日月)が縦一直線に向かい合わせに並んでいる絶景でスタートしました。

最近話題の金星探査機は「暁の明星」から「あかつき」と命名されました。金星は地球の一つ内側を回る惑星で、ひときわ輝いて見えるのは金星を覆う大気が太陽光をよく反射するためだそうです。その大気とは約九十七%が二酸化炭素で、その温室効果で表面温度が四百六十度にもなり、雲は濃硫酸でできているそうです。二十世紀後半に探査機によりその過酷な環境がわかりました。

金星も満ち欠けしますが、月に比べて遠くにあるので、肉眼ではわかりません。奇跡の生還を果たした「はやぶさ」に続き、「あかつき」は、金星の地表や大気の詳細なデータを得る目的で打ち上げられました。

その打ち上げに約二百五十億円かかったそうですが、国会運営費は一日三億円で年間一千億円を超えるそうです。今月の三十日にも金星と三日月が最接近します。夜明け前の南東方向に光り輝く金星と月を見て、夢と希望の新年にしたいものです。

※本記事は、2018年7月刊行の書籍『日本で一番ユーモラスな理科の先生』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。