《生産に対する奨励金は、輸出に対する奨励金よりも詐欺行為に使われやすいということが経験上知られているとも言われてきた。これがどれぐらい本当なのか私は知らない。輸出に対する奨励金が数多くの詐欺的目的に濫用されてきたことは非常によく知られている。》(THE WEALTH OF NATIONS BOOK Ⅳ CHAPTER Ⅴ)。〈※原文は掲載略 訳は庄司による〉

スミスは、製造業に対する奨励金については、先に触れたように、是認されるものもあるという立場であった。したがって、製造業に対する奨励金の不正については「私は知らない」と煙幕を張るのだが、輸出奨励金については手厳しい。

これは言うまでもなく、富は金銀であるという重商主義の理論に異を唱え、富は労働によって生産されたものだと主張したスミスの立場を示したものだ。製造業への奨励金と輸出奨励金とで、どちらにより多くの不正があったのかはわからないし、スミスも具体的な不正の事例を挙げていない。

どのような不正がどの程度あったのかはわからないが、とにかく18世紀において、すでに補助金に関する不正は発生していたのだ。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『補助金の倫理と論理』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。