玲子の目配せに応え、高橋警部補が脱兎のごとく部屋を飛び出して行った。

「たぶん、もうそこにはいないだろうが、何か手がかりの一つも残ってるかもしれない。すまない、気分が悪いところ。後は、明日。具合がよくなったら、調書を取らせてもらう」

タミ子が、大きくうなずいた。何かに気づいたらしい。細い目を、いっそう細めて、にやりと笑った。

「そうかい、そうかい。なるほどね。あんたの本業は、そっちの方だったんだ。脱法ライスの調査で、こっちに来てたんだ」

玲子は、肯定も否定もしなかった。ただ、口元が微かに緩んだ。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『山田錦の身代金』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。