孫は、そう言って足早に帰ったそうだ。あとで聞いたんじゃが、孫も内心なれるかどうか、そうとう心配しとったらしい。

おじいさんが近づけば体をまるめて「フーッ」、そばに寄れば「シャーッ」が続いたそうな。まったく水も飲まず、用意しとったキャットフードも食べんかったんじゃ。

「せっかくお前がきてくれたんじゃ。ばあさんに話しかける気持ちでつきおうてみるか? じいさんに時間はたっぷりあるからのう。ばあさん、あの世からどうして飼うたらよいか教えてくれよ」

つぎの日、ミミと名づけて話しかけてみたんじゃ。あいかわらず、「フーッ」とか「シャーッ」とか言っては、おじいさんを引っかこうとしたそうな。

「お前が引っかいても、歳のせいか神経がマヒしとる。えんりょせんで、思いっきり引っかいてみろ」

おじいさんにもそれなりの覚悟ができとったそうな。なにしろ、おばあさんが亡くなる前の数か月間は、認知症がさらに悪化したらしい。

夜中に大声を出して騒ぎだすやら、外をうろうろと歩きまわっているのを連れもどすやら、それはそれは、大変じゃったらしい。だから少々のことでは、おじいさんもめげなかったんじゃ。

 
※本記事は、2020年10月刊行の書籍『愛ラブ猫 I Love Neko』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。