「乳癌を手術されて……子宮癌の検査をされたいんですね?」
「はい」
「生理は順調で……不正出血もない……」

問診票を見ながらK先生は独り言のように言った。

「これでも、検査をしていいですか?」

K先生は、机の上に澄世が書いた問診票を出し、性交渉……あり・なしの、なしに丸を付けているところを指差して、聞いた。

「出血したり、痛いと思いますが……いいですか?」

続けて聞かれた。K先生の黒目がちな瞳が心配そうに澄世を見つめた。澄世は一瞬考えたが、意味がよくわからず、癌が心配だったし、どんな検査か想像もつかなかった。

「ちゃんと調べて頂きたいですから、おまかせします」と答えた。「じゃぁ、隣りの部屋へ」とK先生に言われ、一旦また廊下へ出て、隣りのドアを開けて中へ入った。「鍵をかけて、脱いだら、タオルを膝にかけて下さい」と看護師が言った。

なるほど、中から鍵をかけるようになっており、澄世は鍵をかけた。脱衣用のかごがあり、ストッキングを脱ぎ、パンティを脱いで、そこへ入れた。サンダルが置いてあり、それを履いて、内診台の椅子の方へ行った。

椅子を見て、澄世は怖じ気づいた。両足を開脚して固定されるようになっていた。スカートをまくり上げ、そこに恐る恐る足を開いて座り、膝にタオルをのせた。ドキドキして、頭はクラクラしていた。

「いいですか?」

K先生がカーテンの向こうから聞いた。

「はい……」

澄世は小さな声で答えた。椅子が動きだし、回りながら上にあがった。

背もたれが後ろに倒れ、椅子は止まった。お腹の前にはカーテンがあり、その向こうに裸の下半身がさらされていた。澄世は恥ずかしさで、失神しそうだった。カーテンの向こうで、K先生が看護師に何やら指示していた。

「楽にしてて下さい。力をぬいて……」

K先生がそう言うや、冷たく硬い何かが、澄世の陰部に触れたと思ううちに、グーッと奥へ入ってきて、押し開けられる感覚があった。

「いた! 痛い! いたっ!……」

そのあと、何かキリッと走る激痛がきた。

「あぁ! いた、ぅぅ……」

※本記事は、2018年9月刊行の書籍『薔薇のノクターン』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。