しかし、それから4〜5カ月経った頃でしょうか。薬の飲み忘れが目立つようになってきたそうです。わざと薬を飲まないかまたは捨てていたことが疑われます。それと同時に、最近多動が目立つと担任が母親に訴えてきたのです。

アトモキセチンなどの薬を飲み続けないと効果が薄れてADHDの症状が再発することがあります。一年経ったのでそろそろ服薬をやめても良かったのですが、中止してADHDの症状が出たということは、薬が効いていたことに他なりません。

まだ薬による治療が必要だということです。私は、薬をやめてもあまり変化がない時がやめ時だと心得ています。

よくよくG君に聞いてみると、飲むのが面倒になったからという理由でした。まだ効果があるのできちんと飲むよう指導し、油断せず今も外来でフォロー中です。

G君のようにADHDを治すことでマイペース、友人とのトラブル、視線の合いづらさといった自閉スペクトラム症の症状も変わっていくことはよくあります。特に、自閉スペクトラム症のお子さんは自分にプライドを持っていることが多く見受けられます。ADHDが良くなって周りから褒められると、プライドがくすぐられ、性格も穏やかになったり、積極的に宿題などもやるようになったりする傾向が強いのです。

また、G君の例でもわかるように、いずれの治療も薬だけではなく、DRCのような行動療法を併用することによってさらなる効果が期待できます。薬さえ飲んでいれば大丈夫というわけではないので注意してください(ADHDの治療に関する詳しいことは、製薬メーカーのネット「adhd.co.jp」「ADHDナビ」「知って向き合うADHD」で検索してみてください)。

※ 本記事で紹介している治療法等は、著者が臨床例をもとに執筆しております。万一、本記事の記載内容により不測の事故等が生じた場合、著者、出版社はその責を負いかねますことをご了承ください。 また、本記事に記載している薬剤等の選択・使用にあたっては、医師、薬剤師等の指導に基づき、適応、用量等は常にご確認ください。

※本記事は、2018年10月刊行の書籍『新訂版 発達障がいに困っている人びと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。