「警察は、このことを?」
「警察は──」

田口は彼女の言葉にかぶせるように言った。

「何も知りません。私どもも言うつもりはありません。とても説明がつく話ではないし、事態をより悪化させてしまう恐れがあるからです。危険な団体を変に刺激することにもなるでしょう。あなたも警察には言わないことです。それこそ厄介なことに巻き込まれてしまう可能性がありますから」
「……では、私はどうしたらいいんでしょうか」
「簡単なことです」

田口はかすかな笑みを浮かべた。

「明日から三日間、休みを取ればいいのです。屋敷に近付かないようにすればいいだけのことです」

柚木は咄嗟に頭の中で旦那様のスケジュールを広げた。確かちょうど明日から札幌に長期出張に行くのではなかったか……。なら旦那様に危害が及ぶことはない。

ホッとしたのも束の間、華の顔が浮かんだ。部屋にこもりっきりの華は──。

「分かりましたね。明日から三日間は危険なのです」

田口の声に、柚木はハッと我に返った。

「でも……どうして三日間なんですか」
「それについてはお話しできません。申しわけありませんが」

柚木は言葉を失って、田口の確信に満ちた顔を呆然と見ていた。

「たとえその企みが失敗したとしても、おそらく新聞に載るほどの事件になるでしょう。いっそ何かうまい理由でもつけて、お仕事を辞められたらどうですか? 屋敷に近付かない限り、あなたは無事でいられます。郷田は無事ではないでしょうが。そのときはそのときです。手が離れてしまえば、あなたには関係ない」

柚木は、旦那様と華の顔を思い浮かべた。自分は一介の家政婦に過ぎない。仕事を辞めたら、確かに二人とはなんの関係もない。