Episode2 逆風

後に会社の柱となる自分と同年代の社員を登用。

社長を引き継いで半年後に新しい人材を採って若返りを図りたいと考え、大学に募集を行った。一年後、大卒の男子新入社員を一人採用し、また同時期に大手の証券会社から転職して来た私と同年齢の二十三歳の男を採用した。

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私と同世代の彼らは、その後、忠実に働いてくれて部長を経て取締役になり二本の柱となって会社の発展に大いに寄与してくれた。特に、その一人であるМ部長は交通事故に遭ったこともある。

対向車と正面衝突して瀕死の重傷を負い、病院に担ぎ込まれて手術室で生死をさまよった。病室で泣き崩れていたお母さんの声を今でも忘れることができない。親の子どもに対する愛情の深さを強く感じ、私は胸を打たれた。

「自分の腕が一本なくなっても良いから彼を生かしてほしい」と父の仏壇の前で本気で祈った。幸い手術が成功して会社に復帰したが、社長の責任の重さを身に染みて感じた大きな出来事であった。

彼も結局は四十九年間現役で働いてくれて、会社を支える柱となった。定年後の現在もM&Aで譲渡した会社の顧問として働いている。同じ年齢なので刺激になり、彼がいたから私も自制できたのだと思う。密かに感謝している。