「いいかい? 君の人生は君にしか生きられない。自分の人生に責任がもてるのは自分だけだからだよ。人生は自分を創ること。君は君以外の誰かになんてなったらだめだ」

ローレンは奥歯をグッと食いしばった。

「ねえ、君はだれ?」
「……私はローレン」
「はじめましてローレン。ぼくは、アイラーヴァ。いいかい、ローレン。巻き戻したい過去も、取ずかしい一日も、きっと、君は立派に生きてきた。だけど、過ぎた記憶に傷付かなくていいし、もう頑張らなくていいんだよ。もう充分、幸せになる準備をしてきたでしょう?」

アイラーヴァはそう言い自分の尻尾の毛を一本引き抜きおもむろに何かを作り始めた。

 

「ローレン、ぼくがミッションを与えよう。まずひとつ目。君の心の中に最初に現れた感情に従うこと。この感情の後にすぐ、今度は理性が現れる。だけど今はその“でも……しなきゃ”の声は無視。そうやって心の声を大切にする練習をするんだ。

ふたつ目。君自身が変化に臆さないこと。大丈夫。怖いのはほんの一瞬さ。何故かって、もしも君のその長い髪の毛を突然バッサリと切り落とせば、初めはみんな見慣れない。でも3日も見ていれば、結局みんな、君自身も、その新しい姿に見慣れる。そんなもんだよ。

そしてみっつ目。歪(ゆが)んだ愛の繋がりをひとつずつ外すこと。自分を見失っている人は他人軸なんだ。だけど君の基準は君。自分の選択に胸をはって」

 

「はい」

ローレンの前へ伸ばしたアイラーヴァの鼻先には先程の尻尾の毛で編まれた指輪があった。

「これはお守り。ゾウの尻尾の毛で作られた指輪には幸せを運んでくる力があるんだ。……さあ、そろそろ君の世界に戻りな。目が覚めたら、きっと暖かい朝が君を迎えてくれる」
「また、あなたに会える?」
「もちろん! でも、ずっと先だね。きっともう忘れているだろうけれど、君は生まれる前に、自分がいつ生まれてくるかと、いつ死ぬかまで、決めているんだ」

アイラーヴァはニヤリと笑った。

 
※本記事は、2020年10月刊行の書籍『いのちの記憶 次のセカイで、また君と』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。