場所が分からず、押し入れやクローゼットをトイレと勘違い…

それは真夜中に起こった。真っ暗な2階の奥の間で押し入れを開け閉めする音がした。

何事かと思って電気をつけた。妻が立っていて、クローゼットの扉を開けようとしていた。

「どうした。何か探しているの?」
と聞くと、
「トイレに行きたいの。トイレはどこ? 私、分からなくなった」
と言った。押し入れやクローゼットをトイレと勘違いしていた。

長年通い慣れている1階のトイレが分からなくなっていた。「何で! 分からないの」と情けなく思った。怒りを我慢して、

「トイレは、1階だからお父さんと一緒に行こう」
と1階のトイレに誘導した。そんなことが何回も起こり、また、睡眠不足となった。

使い慣れた2階の廊下、1階廊下の電気のスイッチの入切りができず、いつも、電気をつけずに真っ暗なまま階段の上り下りをしているのを知った。

とても危険を感じ、早くしないと事故が起こると思い即対応した。

三つの対応策をとった。まず、2階廊下と階段と1階の廊下に手すりを付けた。ケアマネに依頼し手配された業者で工事が完了した。

妻は、介護保険に加入しているので一部負担となり、かなり安くなった。

次に電気のスイッチの入切りができなかったので、人が近づくと、センサーで自動点灯する60形LED電球に取り替えた。

2階の廊下、階段の上下、1階の廊下、トイレの5カ所に付けた。しかも、LEDなので、10Wと消費電力が少ないので電気代も節約された。2階の階段の踊り場にA4用紙で矢印を作り「トイレは1階です」と書き、1階の階段を降りた所に矢印の中に「トイレはあちらです」と貼り、トイレ前に「トイレはここです」と示した。

矢印は、目に付きやすい安全な場所に貼った。そして、トイレの扉に「トイレ」と大きな張り紙をした。これによって、夜中の妻のトイレ行きは、当面、何とか落ち着き私も安眠できた。

[写真1]行き先矢印や自動点灯で対応
※本記事は、2020年8月刊行の書籍『認知症介護自宅ケア奮闘記 私の知恵と工夫』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。