「おおい、水だ、水! いたずらが過ぎるよ!」

それから一時間ばかり歩き、イマイ村に到着した。川田ははじめて訪れる本物の縄文の村に目を輝かせた。入り口にユヒトが立っていた。彼はまるで待ち受けていたかのようだった。

「泉に言われてやってきた」
盛江は言った。ユヒトはうなずき、
「さあ、こっちへ」

二人が通されたのは、集落の奥にある竪穴式住居だった。盛江が頭を低くして内部に入ると、すぐに

「おお、盛江君!」聞きなれた声がした。
「その声は林!」
「川田君もよく来てくれたね!」

川田は息を飲んだ。てっきり死んだと思っていた林が目の前にいる。藁の束に腰掛けて、笑顔を浮かべている。

すると、
「やあ」にわかに後ろから肩を叩かれた。
振り返ると目の前に岩崎と岸谷の姿がある。

「うーん……」川田は目を内側に寄せてひっくりかえった。

「おおい、水だ、水! いたずらが過ぎるよ!」
うろたえる林の声が住居内に響いた。

盛江と川田は事実を聞かされた。

早坂と沼田に呼び出されたこと、亡くなった中学生女子の墓の前の崖から突き落とされたこと、運よく通りかかったユヒトらに助けられたこと――。

川田は顔をくしゃくしゃにして聞いている。
「先輩たちが生きててくれて、良かったっす……でも、どうしてすぐに連絡をくれなかったんですか」

岩崎が答えた。

「事が事だからな。事実を知れば泉だって正気じゃいられないだろう。逆上して、短気なお前を巻き込んで、早坂と沼田に危険な行動をとるかもしれない」

「危険な行動も何も、悪いのはあいつらじゃないか」盛江は憤って言った。

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『異世界縄文タイムトラベル』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。