ふと天井を見ると、そこには小鳥が巣を作っていた。世俗と離れて、山にこもった今となっては、この鳥だけが僕の友達である。その後は、ぼーっとしてそれを眺めていた。

僕が人と接するのが嫌になったのは、いじめられていたからだけではない。僕は病にかかりがちで仕事をよく休んでいた。それを見てみんなが、「働かざるもの食うべからずだ」とか「いい歳して仕事をしないのは恥だ」などと言うのだ。

それに対して、「働きたくて、働きたくてしょうがないのに、どうしても働けない気持ちがわかるか!」と突っ込みたくなるところだが、彼らもそんなに馬鹿ではない。それをわかったうえで言っているのだ。

そもそも彼らは義務があると思って仕事をしているのではない。得をするために仕事をしているのだ。それで、僕の悪口を言って、共通の敵を作ることで団結力を高め、結果、得をしようとしているのだ。やはり、人の本性は、悪である。

僕が病にかかって仕事をしないことを心配した親が、占い師のところに連れて行ったが、その占い師が最初、何も言っていないのに僕の仕事や、僕が長男であることを当てた。おそらく占い師を長くやっているので、僕のようなタイプの人は、どんな職業が多いか、あるいは、長男であることが多いと知っていたのだろう。

それなのに、親はその占い師のことを信じてしまった。実に馬鹿らしい。そんなことを考えていた。

長い一日が終わった。その日もよく眠れなかった。

※本記事は、2020年2月刊行の書籍『令和晩年』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。