肝細胞癌の治療でも根治性の高い治療を選択すると、癌以外の肝への悪影響により、肝予備能が低下して、安全性が低下しますし、根治性の低い治療を選択すれば肝への影響は少なく、安全性を確保できます。われわれは常にこのようなトレードオフの中で意思決定しています。

しかし、医療においては感度も特異度も高い検査法が望ましいですし、根治性が高く、安全性の高い治療が望まれますので、トレードオフを克服するところにビジネスチャンスがあるとも言えます。実際、安くてうまい牛丼や、小さいが高機能のパソコンが発売されています。

トヨタ自動車は低コストを実現しながら、安全性、燃費、サービスで競合他社を上回る価値を提供しています。経営者は日々難しい問題に直面し、そのために迅速な意思決定が求められます。

経営において意思決定するということは一つの目標と別の目標とのトレードオフを克服することを意味します。したがって、意思決定に当たっては、行動の各選択肢の費用と便益を比較することが必要です。

大学に行くか、働くか? 勉強するか、デートに行くか? 授業を聞くか、寝るか? そこで、あるものを獲得するために放棄したもののことを、そのものの機会費用(opportunity cost)と呼びます。

※本記事は、2017年12月刊行の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。