だが、その想いは実にデリケートで、普通の恋人達のように簡単にはいかなかった。私は何か、彼への愛を証明できる行動をしたかった。そうせずにはいられず、いてもたってもいられなくなった。

ブランドのネクタイを選んで贈るような事はしたくなかった。私は考えたあげく、しごく月並みなのだが、彼に編み物を作ってプレゼントしたいと思った。

私は編み物をした事がなかった。母がいれば習ったかもしれないが、私は三十のこれまで、編み物をする事なくきた。

それで、手芸店へ行き、あれこれ見てみた。初心者がセーターなど編めるはずがないのは、すぐわかった。

私は、単純に、そうシンプルに、彼にマフラーを編もうと決めた。まず、「易しいマフラーの編み方」の本を一冊買い、それを見ながら、店の中を見てまわった。

太さ七ミリの「編み針」と、裾の飾りのフリンジを付けるのに使うと書いてある「かぎ針」と、糸始末に使うらしい「とじ針」を買った。店員に聞くと、それでいいと言われた。

それから、糸を選び始めた。紺色かグレーか迷ったが、紺色の方がシンプルな気がして、純毛で太めの紺色の糸を選んだ。また店員に聞いて、男性用のマフラーを編むのだと言うと、五〇グラムの玉巻が五玉あればできると言われ、五玉買った。

※本記事は、2019年6月刊行の書籍『愛』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。