泉は一読して目眩を覚えた。涙がこんこんと湧いてくる。嗚咽が漏れそうになるのをユヒトがシッとやって制した。

泉は頭を上げてユヒトを見た。
「私、どうしたらいい?」
「とにかく一度村に来て、直に会ってほしい」
泉はうなずいた。

その晩、泉は観光案内所の裏に盛江を呼び出し、日中ユヒトから見せられた手紙のことを話した。盛江は仰天した。

「何だって? じゃあ三人は」
「シッ!」

泉は鋭い音を立てた。盛江は声を殺して唸った。顔が歪み、目に涙が浮かぶ。

「喜ぶのは早いわ」泉は言った。「手紙の内容からは、林君が何を求めているのか分からなかったの。三人が生きていることは私と私の信用できる人物以外、誰にも言うなって」

「手紙にはそれだけしか書いてなかったのか?」

泉はうなずいた。手紙は読んだ後にサインをしてユヒトに返した。下手に受け取って誰かに見つかっては、林の意図を外れることになる。サイン付きで返せばユヒトが任務を全うした証拠になる。

「ユヒトが『一度村に来て』って言ってた」
「きっとそれは林からの言付けなのだろう」
「イマイ村の場所を知ってる?」
「以前探検隊で行ったからな」
「そうだったわね。でも――早坂君がイマイ村に行くのを許すとは思えないわ」

「モロに行くって言ったらそりゃあダメだ。木の実拾いの範囲拡大のために森の奥へ探検に行くといって、長時間塀の外に出られるようにしよう」

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『異世界縄文タイムトラベル』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。