それぞれの道

「俺は凡人だから努力する」賢一を天才へと押し上げたもの

人は努力だけでは一番にはなれない。
才能・努力・運の全てがかみ合わなくては、それを成し遂げる事は出来ない。

例えば才能がある人間が、その道を選ばなければ、それで終わってしまう。また、その道に進み才能があっても怪我をしてしまう事もある。また指導者と反りが合わなかったり、人間関係がうまくいかない事もあるだろう。

それは受験に関しても同じで、全ての事を完全に暗記している事は難しく、受験に出る所を完璧に全て覚える事は困難だ。また覚えていても、その時に度忘れしてしまう事もあるだろう。

そう考えれば、トップを取るという事は、全てがかみ合わなくては成し遂げる事は出来ない。そういう意味で二人は天才と言えた。

しかし賢一は、自分の事を天才とは思ってはいなかった。なぜなら、天才ではないがゆえに人より努力し、それを勝ち取ったと思っていたからだ。

賢一は禅の事を本当の天才だと思っていた。それは中学生時代、一緒にバスケ部に入った時に感じた。同じ練習をしても、一瞬で自分のはるか先に行った禅を目の当たりにしていたからだ。ある意味で、それが賢一の原動力となっていた。それ以来、賢一は自分に言い聞かせた。

“俺には勉強しかない、そして俺は天才ではない、だから人一倍努力しなければいけない!” 
そう言い聞かせ、人より努力してきた。そして、それは今も同じだった。

“俺は凡人! だから人より努力する”
そう信じて生きていた。そして努力しないと賢一自身が終わってしまう気がした。

“おれは走り続けなくては……止まってはいけない、止まったら終わってしまうのでは?”
その不安が賢一のさらなる原動力となり、秀才賢一から天才賢一を作り出した。