それは、工事げんばでよく見かける、プレハブのたてものでした。まどガラスにはヒビが入っていて、うすよごれたカーテンがひかれています。

「あいつ、ほんとにビンボーだったんだ」
「まさか、あんなオンボロの家に、すんでるなんてな」
「クラスのやつらに言ったら、みんなびっくりするだろうな」

レオとムッチーは、大発見でもしたみたいに、話しています。

『えっ? まさか、クラスのみんなに言うつもり? 目つきが気に入らない、ってだけで?』

ヤマトは、こころの中で、思わずさけびました。

『やっぱり、ついてくるんじゃなかった!』

あきれるとどうじに、なんだかはらが立ってきました。ヤマトは、じりじりあとずさりすると、レオたちのせなかにむけて、するどく言いました。

「ぼく、さきに帰る!」

へんじもまたずに、ダッと走り出しました。

「あっ! おい、まてよ」

レオの声が、追いかけてきます。

「まてったら!」

ヤマトは、そのまま一気に、野原をかけぬけました。そして川のほとりのヤナギの木のむこうに、パッとかくれてしまいました。

「おい、ムッチー、もたもたすんな!」

レオはヤマトに気がつかず、通りすぎていきます。

「むりだよ~。ヤマトは、クラスで一番、足が早いんだから~」

からだの大きなムッチーも、ゼイゼイ言いながら、行ってしまいました。ふたりのすがたが見えなくなると、ヤマトはなんとなく、ヒロユキの家のほうにひきかえしていきました。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『ソウル・テール だれも知らない、オレたちのじゅもん』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。