電話のメモをとるのが苦手でパニックになる

○お菓子屋にパートで勤める。はじめはお菓子の種類や会計の仕方など、教えてもらう日々で楽しく働いていたが、少し慣れてくると「あれやってください、これやってください」と言われるが「『あれ』や『これ』が何のことか、『これのことかな?』と思ってもほかの人は忙しいので聞くこともできなくて、ウロウロしちゃうんです。

電話も取ってと言われ、注文が入るのですが、聞いていてもよくわからないしメモも取れないんです。店長がどこかに行く時に『お客さんがこの箱詰めを取りに来るのでお会計をして、足りなくなったものを補充して、棚も整理しておいてね』と言われたのですが、フリーズして、どうしたらよいのか、涙が出てきてしまったんです」。

〔あれ、これ、それの指示語がよくわからないことは、発達障害の傾向がある人にはよくあります。また一度に複数の指示、課題(タスク)があるとどうしたらいいのかわからなくなり、フリーズしたりパニックになったりすることがあります。また、往々にして聴覚刺激からの理解が弱いので、電話のメモをとるのが苦手なこともあります〕

その後、彼女はほかのパート職員に「大丈夫? どこか悪いの?」と心配されるようになりましたが、頑張っても改善は見られず、そのうち「病院に行ったの?」、「いつ治るの?」と言われ、自分はダメなんだと思い、そのお菓子屋を辞めてしまいました。

〔はじめは心配してくれていると思いましたが、そのうち責められているように感じ、深く傷つき、自分はほかの人のように働けないのだと気づいていきました〕

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『“発達障害かもしれない人”とともに働くこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。