術中のセンチネルリンパ節生検でも、癌の転移はなかったと、それで、S先生は、化学療法はいらないと言った。澄世は自分がラッキーな事につくづく感謝した。

その二日後、澄世は退院した。澄世は術後経過の通院の時、病棟へ行き、恵子を見舞った。

「恵子さん。私、乳癌だったんだけど、手術して、おかげで無事だったの。ありがとう」
「ダメよ! 安心しちゃダメ! もっと調べて!」

やせ細った恵子は、思いもかけず厳しい顔で、そう叱った。澄世は不安を感じながら、帰った。そう言えば、入院中、ある看護師が言った。

「楯見さんみたいに、若くて乳癌になる人は、子宮癌になる確率も高いんですよ」
「えっ?」
「それも、普通の検査でわかる子宮癌じゃなくて、子宮体癌って言って、特に先生に言わないとしてもらえない検査が必要なんです」
「どういう事?」
「普通の検査は子宮頸癌の検査なんです。でも、その癌じゃなくて、子宮体癌の検査をしなくちゃ意味がないんです」

そう言われ、まさかと不安に思ったが、恵子にダメよ! と言われ、また不安になった。