発達障がいは治療できる 診断、対処法、正しい治療を受けるために

“「発達障がい」は治療ができない難病ではありません。具体的な向き合い方、どうすれば症状は良くなるのかといった筋道はあります。早期発見・早期介入が求められるのは、治療が早ければ早いほど症状に改善がみられるからです。” 医療現場の実情、最新の診断・治療法を専門の小児科医が解説していきます。

ADHDは、治療でどのような効果が現れるのか

ADHDを薬で治療するとどのような効果が現れるのか、アトモキセチンを使った治療を例にとって見ていきましょう。

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アトモキセチンの治療は4段階(Step1~Step4)に分けて徐々に増量していきます。Step1〜Step4までの各々の段階において学校と家庭で具体的にどういう効果が出るのか図1に示します。Step1は0.5㎎/㎏/日、Step2は0.8㎎/㎏/日、Step3は1.2㎎/㎏/日、Step4は1.5~1.8㎎/㎏/日での効果実例を示しています。

以下に記した内容は、外来に来た母親の生の声です。ただし、外来で私が母親にアトモキセチンの効果を尋ねると、ほぼ全員の方が最初は「何も変わりありません」と答えます。

風邪薬などと同じように、薬を飲んで効果がある=完治するという意識はどうしてもあるようです。しかし、「朝はどうですか?」とか「ノートはどうですか? 綺麗にとれていますか?」など具体的に聞くと「あっ、実は……」というように母親は話してくれます。

母親は、薬を飲んで、お子さんがどんなところが良くなったかをしっかりと見るようにしてください。そうすることで、効果が実感できるだけでなく、「○○が良くなったね」とお子さんを褒めてあげられるようにもなります。

投薬により不注意症状が改善した結果、書字が整うようになった一例(7歳、小学2年生女児)を図2に示しています。書字改善は、グアンファシンに限らずアトモキセチンやメチルフェニデートでも効果が認められます。

[図1] アトモキセチンの効果実例
[図2] グアンファシン投薬前後の書字改善例[小2]

それでは、実際に薬を使った治療がどのようになされていくのか、自閉スペクトラム症+ADHDと診断された小学1年生の男の子、G君の話をしていきましょう。