糸を照らしながらローレンの前を飛ぶホタルはこう続ける。

「君がもし自分が可哀想だ、自分はダメな奴だと考えていたら、頭の中の無意識が君を本当に可哀想でダメな奴にしてしまう。無意識さえ味方にしてしまえば、ぼくたちは毎日幸せなのになあ」

 

まっくらな森の中を進んでいくと、突然、何かに気がついたホタルが「あっ」と言った。ホタルの視線の先に目を向けると、そこには鹿のような馬のような見たことのない生き物がいた。

「あの子はクアッガ。あの子も“独り”」

そのクアッガと呼ばれる生き物は、明らかにこの世のものではない雰囲気でなんだか不気味だ。

「破壊と再生の繰り返しだね、ローレン」

そう言うとクアッガは、ローレンと繋がる糸をモグモグと食べ始めた。

「えっ……」

ローレンは驚いて後ずさると次の瞬間、青い海の中へと落ちた。

 
※本記事は、2020年10月刊行の書籍『いのちの記憶 次のセカイで、また君と』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。