【第3回】

耳元で「泣かないで」と、か細い声が聞こえた。パッと目を向けると、肩の上に小さなホタルが乗っていた。

「ぼくが世界を照らしてあげる。だから泣かないで」

ホタルはそう言うと、ローレンの足元を照らした。

「……君は独りで寂しくない?」
「この森にホタルはぼくしかいない。だけど寂しいなんて思わない。いいことを教えてあげる。とても難しくて、とても大切なこと。ぼくたちがこの尊い毎日をいかに無意識に過ごしているのか。それを知っている人はごくわずか」

ホタルはクスクスと笑った。

「でもその無意識をあなどってはいけないんだ。無意識が、ぼくたちの運命を決めるんだから」
「私、この糸の先へ行きたいの。糸を照らしてくれる?」
「もちろん」