薬を使用したADHD以外の症状改善として、自閉スペクトラム症に見られるこだわりやくどさが減ったり、実行機能の改善として会話の切り替えや行動が素早くなったりします。

また、時間処理の改善により段取りが良くなり、宿題をやるのに30分かかっていた子が5分でできるようになることもあります。自閉スペクトラム症の症状でもある視線の合いづらさ、チックや夜尿、吃音(きつおん)などが改善したお子さんもいます。

なお、2012年からはアトモキセチンが、また、2013年からはメチルフェニデートも成人適応となり、18歳以上の方でそれまで薬を飲んでいなかった方も、ADHDの薬物治療が開始できるようになりました。

私のクリニックでは親子で治療しているケースも増えています。親子並行治療により親子関係はとても穏やかになります(参考文献:「注意欠如多動症を伴った自閉スペクトラム症親子に対する並行治療の臨床効果」鈴木直光小児科臨床2017年4月号)。

グアンファシンは、日本のADHD治療薬としては3種類目となる薬で2017年5月から小児期限定で発売されました。2019年には成人適応となる予定です。1日1回食後に服用します。30日分以上でも処方可能です。体重50㎏未満の方は1㎎から、体重50㎏以上の方は2㎎から開始し、主治医と相談しながら漸増していきます。

この第3の薬の出現により、アトモキセチンやメチルフェニデートで無効だったADHDの患者さんにも一筋の光明が見えてきたのです。作用部位はアトモキセチンやメチルフェニデートと異なり、後シナプスに作用し、「やらなきゃ」という効果が出てきます。

副作用は眠気は出ますが、食欲低下や成長抑制がないのが特徴です。副作用の眠気を抑えるメチルフェニデートとの併用が比較的多いです。小さな錠剤で飲みやすい利点もあります。

※本記事は、2018年10月刊行の書籍『新訂版 発達障がいに困っている人びと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。