「はーい、質問でーす」と早苗が言った。
「処女であってほしいという女の人はどういう基準で選んだの?」

「これは厳しい質問が飛び出しました」と中条は言った。
「小林君、納得のいくように説明をお願いします」

「それはもちろん」小林は考えるように言った。
「僕が将来結婚するとしたら、そのとき結婚したいと思う相手十人ということです」

「こりゃあ小林の人生は大変だな。結婚したい相手はみんな処女じゃないというわけだ」

「ねえ、やはり男女差別よ」と少し冗談めかして早苗が言った。「結婚相手が処女じゃなくたっていいじゃない。男の方だって、もう、みんな童貞じゃないんでしょう」

この爆弾発言に、みながやがや反応しだし、せっかくのゲームはすぐに終わってしまった。その後はみな気取らない立食パーティーのようになり、和やかに会話が弾んだ。

この合コンは不思議なことに、ほとんど女の子主導で進んだといってよい。先にも書いたように、美男好みの茜は風間の演劇を見に行くことになったし、美咲は男らしいと思った中条とデートの約束をした。

香奈にとっても合コンは楽しかったが、これは後々香奈には苦しい思い出ともなった。それは香奈が小林に恋をしてしまったからである。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『百年後の武蔵野』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。