それは、日本人が(さらには残念なことに、個人主義の国、本家本元のあのイギリスでさえも)ファシズムの考え方を捨てきれないでいるのだ。ファシズムは今では資本主義となって、その主義はいい主義だと思われている。

そもそもファシズムの前の主流は共産主義で、それが正しいと言われていた時代もある。つまり、日本人は何度も様々な人がファシズムはいけないと訴えているのに、そのたびに違う名前の主義に変えて思想は変わらないのである。杉田はこの言葉を直すなら「一人は一人ひとりのために」だと思っている。

杉田にはもう一つの思想があった。それは利己主義である。これも誰もが違っているという考え方である。昔、利己主義が正しいと訴えた人がいたが、利己主義を広めても広めた人の利益にならないという矛盾を指摘されたらしい。

しかし、杉田はそうは思わなかった。全員が自分を大切にすることを正しいと思う、つまり「一人は一人ひとりのために」それが彼の利己主義だった。そしておそらく男は利己主義が多く、女性はファシズムが多いので女性を差別しているのである。

フットボールの試合は日本の大敗だった。杉田はがっかりしてスタジアムを去った。

※本記事は、2020年2月刊行の書籍『令和晩年』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。