公庫の融資、県の補助金交付事務といった実務経験をもとに、日本の金融と補助金の問題点を考察していきます。当記事では未曽有の大災害時に、補助金をもらうため「だけ」にグールプを組んだ事例が相次いだことについて、筆者が語ります。

グループ補助金の正当性

平時ならともかく大災害からの復旧なのだから、わざわざ多大の労力をかけなくても、グループを組ませることなしに一企業に補助金を出すというシンプルなスキームにしてもよかったのではないかと思う。もっとも、「シンプルなスキーム」というのは民間人の発想であって、役人の辞書には「シンプル」という言葉はないから、いくら手間をかけることになっても彼らは苦にしないのだ。

しかし、グループの外にいる企業のことも忘れてはならない。初期に採択されたグループのほとんどは、商工会議所、商工会によってまとめられたものだ。商工会議所等に加入していない、いわゆる一匹狼はグループ補助金の恩恵を受けることはできなかった。

もちろん、商工会議所等に加入していないということは、加入していれば受けられたであろう恩恵をあえて拒否することになるのだから、加入しないほうが悪いんだ、という考え方もあるかもしれない。

実際、グループ補助金のために商工会議所に加入した企業は少なくない。東日本大震災後、石巻商工会議所の組織率は62%と全国平均(約35%)を大きく上回った。

これもグループ補助金の思わぬ成果である。商工会議所等に加入することがグループ補助金受給の要件ではないし、商工会議所等に加入していなくても、グループを組成することができた人たちもいる。