私は親の世代が死に物狂いで、生きるために働いてきたことを覚えています。青春時代は戦争にとられ、戦後は生きるためだけに働き、一生を駆け抜けていきました。ほんとうに悲しい世代です。

いまの若い人には、想像の世界でしかありません。しかし、今回の新型コロナによって、前の世代が体験したような、過酷な現実を体験していく可能性があるのではないかと思うのです。

今や、世代を問わず、「焼野原」を体験しつつあります。私は、この新型コロナによって、日本人はやっと長い眠りから目が覚めるときを迎えるのではないかと思います。

適切な表現ではないかもしれませんが、これで、世代を超え、日本人みんなが助け合いながら、新生日本をつくりあげることができるのではないかと思います。

私たちは、今後、どのような生き方をしていけばよいのでしょうか。歴史上一人の皇帝がいます。マルクス・アウレリウス・アントニヌスです。第十六代ローマ皇帝(西暦121年~180年)です。

マルクス・アウレリウスは、稀代のすばらしい皇帝です。権力をほしいままにできる皇帝でありながら、一人の人間として生き抜いた人です。権力のトップに君臨しながら、一人の人間として、正しく生きることは至難の業です。

しかも、マルクス・アウレリウスの統治したローマ帝国は衰退の一途を辿り、かつ、パンデミック(ペスト)が広がった過酷な時代です。

自省録によれば「即位早々、北境ゲルマン人たちの擾乱、ティベリウス河の氾濫、地震等の災難に相次いで襲われ・・・パルティア人たちとの戦争も起こった。・・・帰還の際、ペストの病毒を持ってきたため、疫病はライン河にいたるまで蔓延し、人畜の死体がいたるところに累々とよこたわる有様であった」。

(出典:「マルクス・アウレーリウス自省録」岩波文庫)とあります。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『ワークスタイル・ルネッサンスがはじまる』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。