第3章 世界のパラダイム

ビフォアコロナ アフターコロナ

14 快楽主義からアタラクシア(不動の心)へ

新型コロナによって、私たちの目の前には、心象的にはすでに焼野原が広がっていると思ったほうがよいかもしれません。私は、講演会やセミナーでよくこんなことを述べてきました。

顰蹙を買うのを承知でお伝えしますと、
「取り返しがつかないところまできているならば、政治家もごまかしをすることなく、この国を早く清算(破綻)したほうがよいかもしれません。焼野原になれば、私たちはみんなで力を合わせて生きていくことを思い出し、特に若い人たちは目が覚めるに違いない」とお話ししてきました。

快楽主義に走っていた若い人も、ほんとうに快楽に酔っていたわけではありません。やるせない思いをぶつけられず、ニヒリスティックに快楽主義に走っていたのではないかと思うのです。

私の親の世代は、昭和21年2月17日に日本の財政破綻を経験しています。戦争で負けただけでなく、国の財政が立ち行かなくなり、ついに終戦翌年に財政破綻をしました。

私の母は、昭和21年1月に結納を交わし、結納金で家具を購入する予定でしたが、月をまたいだため、全く何も買うことができず、形だけの結婚式を挙げました。

すべての日本人は焼野原から、生きることにほんとうに一生懸命になり、今日の私たちの暮らしの基礎をつくりあげました。その世代の遺産で私たちの暮らしが成り立っているといってもよいでしょう。