この政策によって、それまで持っていた宗教観を強制的に変えさせられ、国家神道が台頭してきます。そして寺院は大弾圧を受けました。

こうした明治政府の政策方針で、国民は国家神道を強制的に押しつけられていきます。この傾向は時代を経るにしたがって強まっていき、第二次世界大戦の敗戦を迎えるまで続いたのです」

「はーあ、そうなんだ……」まゆみが大きくため息をついた。

「ですから明治憲法のもとでは、古代史の自由な研究はできなくなりました。例えば『日本書紀』の記事の信憑性を検討する研究を行った早稲田大学教授の津田左右吉(つだそうきち)は、その内容が天皇を侮辱しており、不敬罪に相当するという批判を受けて起訴され、出版の禁止、禁固刑という判決を下されました。この判決は終戦後取り消されますが、このように当時は『日本書紀』は聖典視され、それを批判することは許されなかったのです」

「でも新しい憲法ができてから、時代が変わりましたよね」まゆみが確認した。

「それがそうじゃないから困るのよ」と沙也香がいうと、夫人は小さく笑った。

「終戦後、新しい日本国憲法を作るとき、アメリカは天皇を死刑にし、天皇制を廃止しようと考えていました。でもそれはできなかった。なぜだと思います?」

「天皇陛下を国民が崇拝していたからですか」まゆみが自問するようにつぶやいた。

※本記事は、2018年9月刊行の書籍『日出る国の天子』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。