手術は楽しい

「これが胆嚢管で、これが胆嚢動脈ですよね?」
神谷君はモニターのCT画像を動かしながら僕に質問する。

「そうそう、この2つにそれぞれクリップをかけて切る。あとは胆嚢を肝臓から剥がせばきれいに取れるんだ。まあ、口で言うのは簡単なんだけどね」

僕は神谷君の質問に簡単に答える。それにしてもいきなりCTを見て質問してくるとはさすがはエリートだ。

「そろそろ手洗いに行こうか」

患者に麻酔がかかって準備が整った。さあいよいよ勝負が始まる。

消毒されたお腹の部分だけが切り抜かれた滅菌の布・オイフを、患者の全身にかける。そして、その上に電気メスや腹腔鏡カメラなど必要な道具を置いていき、手術がしやすいように環境を整える。今日は僕が執刀医だからリードしていかなければならない。

「電気メスはもう少し頭側に置いたほうがいいよ」
「これだとコードが短すぎてカメラがうまく操作できないから、もう少しコードを延ばして」

外科医になりたての僕にとっては準備も簡単なことではない。畠先生にいろいろと修正されながらたどたどしく準備を進める。

「ではタイムアウトをお願いします。藤本功さんで胆嚢結石症に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を行います。手術時間は2時間くらいで、出血量は少量です。よろしくお願いします」