ブルーストッキング・ガールズ

7

「君は、不思議な人だ……こんなに大変な事態になってるというのに、こちらが逆に励まされる。こんな片田舎に、君のような進歩的な思想を持った人がいるなんて思いもよらなかったよ」

「そんな……進歩的だなんて……ただのお嬢さんです。……父は甘い人で、私の言うことなら、何でも聞いてくれました。幼い頃でした。街に出たときに、玩具屋の前に赤い服を着たとてもきれいなお人形がありました。私はうっとりとそれに見とれていました。父は『早く、行くぞ』と言ったのですが、私は頑として動きませんでした。

もう一度父が『行くぞ』と言ったとき、私は父を睨んでいました。じっと。それは長い時間だったような気がする。だんだん涙も溢れてくるのに、じっと父を睨んでいた。そんな私の頑固さに父は負けて……今から考えると、その人形はとても高価なものだった、びっくりするくらい……

東京の女学校に進んだのも、文学少女の私のわがまま……祖父の『女には学問はいらん』の言葉を押しのけて……高い学費と寮の費用……夢のような生活だった。本当に楽しかった。そしていろいろなことを知って……いろんなことに出会って……本当に……本当に、甘い父……でも……結局、私は父を裏切ってしまった」

「うん……ぼくは君を……今度はぼくが君を守らなくちゃいけないのかもな。ぼくはちっぽけな男だ。その男が持っているものと言えば、それこそ小さな小説だ。しかし小説という武器は我々の苦しみを率直に表してくれる。叫びを表せる。

この文明という異形に挟まれた人間の叫びを伝えることができるんだ。ハハハ……と言っても、ぼくの書いているのは、もっと小さな恋愛に押しつぶされた人間だ。しかし奴らはこんな小さな犬が吼えるのさえ許さない」

遠くから、捜索を続ける警察官の声が近付いてきた。

「来た! 紅林先生、逃げますよ」