玲子がため息をつくと、葉子が、嬉しそうにうなずいた。

「まずい酒もありますが、米の酒も造り方によっては、こんなにおいしくなるんです。でも残念なことに、米で造った酒に、蒸留したアルコールを添加してるのもあります」

「蒸留酒を、添加するだと?」
「サトウキビから砂糖を作った後に残る廃糖蜜(はいとうみつ)。それを原料にして、蒸留して造ったアルコールを、日本酒に混ぜるんです」

「米だけで造れるのに、なぜ、そんな手間のかかることを?」

「安くできるから。太平洋戦争中の満州の零下の気温に耐えるとか、戦後の米不足とか。歴史的な理由付けはあるんですが、今も続いているのは、主に価格です」

「金、金、金。世知辛い世の中だよ、まったく。アルコール添加した酒が、日本酒全体の約八割だからね」

顔をしかめたタミ子が、大きく肩をすくめて見せた。
葉子も、悲しげにうなずいている。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『山田錦の身代金』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。