それぞれの道

二人は高校二年生になっていた。

禅は、相変わらず身勝手で、見栄っ張りな彼女とは距離をおいていた。最近では下級生に、ちやほやされる禅に、やきもちを焼いて来る……そんな彼女に嫌気がさしていた。

「なんで会ってくれないの?」
「部活が忙しいんだ、全国大会も控えているし……今は、バスケットに集中したい」

禅は、そう一方的に言うと電話を切った。
「ああ、面倒くせえ!」

禅は、バスケットに関してはもはや敵なしだった。他のメンバーも禅には劣るものの、バスケットの強豪校だけに全国レベルではトップレベルだった。他校が張り合える訳はなかった。全国大会が始まると、ほぼ快勝で“優勝は当たり前!”という前評判どおりに全国制覇を成し遂げた。

禅は二年生ではあるが、すでに水面下で、社会人チームや、有名体育大学が獲得を狙っていた。禅は、大学に進学して、バスケの腕を試すために、海外留学してみたいと考えていた。

三年生が卒業を控えた頃には、禅と彼女は別れていた。禅が一方的に振った形だった。
別れる理由は簡単だった。

「なんで別れるの?」
「………」
「私は、こんなに禅を愛しているのに」
「愛している? 僕の何を愛しているんだ?」
「全部に決まっているでしょ!」

その言葉を聞いた禅は、今までたまっていたものが爆発した。

「全部? 君と僕とは、ただの友達だよ、君は勝手に愛していたかもしれないけど、僕の中にそんなものはなかった」