禅が、彼女と付き合い始めたのは二カ月前からだ。

しかし、禅はあまり彼女の事が好きではなかった。彼女は、高校の一学年上の先輩だった。元々禅の追っかけで、熱狂的なファンだった。容姿は美人で三年生からも人気があった。

しかし、同じ二年生からは、美人を鼻に掛けている感じで高飛車というイメージが強く人気が無かった。実際、気が強く負けず嫌いでプライドが高い。だから禅と付き合ったのも、自分の彼氏は恰好がいいと、みんなに自慢したい気持ちがあったからだ。

まだ高校に入ったばかりで、恋愛も良く分からない禅に、彼女が猛アタックをしてきた。それに押されて付き合う形となってしまった。

禅は、彼女といる時が苦痛だった。

「今度の日曜日、どこに行く? 禅くん、まだ遊ぶ所、知らないもんね。私が考えておくね」
「………」

禅は彼女といる時間があるなら、好きなバスケットをやっていたかった。禅は、彼女と別れると寮に戻る途中、ため息をついた。

一方の賢一は、高校に入学してからも変わらず猛勉強していた。

“俺には勉強しかないんだ”
そう自分に言い聞かせ、ただ勉強をしていた。中間テストの結果は学年トップだった。

“明日から始まる期末テストも必ずトップを取る!”
そういう気持ちでいた。その努力は並大抵のものではなかった。いや、そんな言葉は生ぬるい。それは異常とも思えるほど、通常の人間の努力ではなかった。

「俺はやり遂げる、目標を達成するために!」
賢一は、そう呟いた。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『アリになれないキリギリス』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。