私、口の中でもごもご言う。

「精一杯、協力しているつもりだが、何が不満なのだ?」
「私だってたまには飲みに行ったり、遊びに行きたいのよ」
「何、言ってんだ、さっきの話と全然違うじゃないか」
「私の話、全然聞いてくれないのだから……」
「……」

こうなると、会話でも何でもない。何を言っても駄目である。私は押し黙る以外ないなかった。

そんな時、必ずショーはメソメソと泣き出す。「喧嘩はやめてよ」って、言っているかのようである。

夫婦にとって天の救いである。ここまでくると二人とも話を終わらせたいのだがキッカケが掴めなくなっているのだ。

ショーが泣き出すと二人の口論は、それが合図のように収まる。昔の人は「子は鎹(かすがい)」とは良く言ったものである。

しかし、妻の不満は解消されず徐々に心の奥底に沈殿していくのであった。私は私で妻を支える包容力はまったくなくなっていた。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『ショー失踪す!』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。