レオにとって、ヤマトはとくべつななかまです。べんきょうができて、スポーツもとくいで、ゲームだって強くて…。

レオは、ヤマトにだけはかなわない、と思っています。しかしヤマトは、小さな声で答えました。

「ぼくは、べつに…」

レオは、少しがっかりしたようすで、口をとがらせました。あわててムッチーが、ヤマトをけしかけました。

「なんだよ、おまえもちゃんと合わせろよ」

するとヤマトは、ムッチーをチラッとにらんでから、『てんこうしてきたばかりのやつを、エモノになんか、するなよ』と、こころの中で言いました。もちろんその声は、だれにも聞こえませんでした。

「ムッチー、やめろ!」

レオが、ぴしゃりと言いました。ヒロユキが立ち止まって、こっちを見ているのに、気がついたからです。

「むかつくんだよ、あの目。あいつ、ときどきおれたちのこと、見てやがるんだぜ」

レオは、イライラしながら言いました。

「おれも、あいつの目、にがて。あいつに見られると、なんだかぞっとする」

ムッチーも、言いました。たしかに、ヒロユキの大きな目に見つめられていると、なぜかヤマトまで、ソワソワしてたまらなくりました。

「おい、見てんじゃねぇよ!」

とうとうレオが、どなりました。とたんにヒロユキは、ハッとしたようすで、目をふせました。そして、せなかを丸めて、にげるように行ってしまいました。

「あとをつけてみようか…」

レオが言い出しました。

「いいじゃん、おもしろそう」

ムッチーも、ニヤリとわらいました。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『ソウル・テール だれも知らない、オレたちのじゅもん』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。