元駐在員が見たリアル――。これだからインドは面白い!

日本の常識は一切通用しない。元駐在員が書き留めた、リアルな現地事情。ゴルフ場のグリーンを横切るコブラ、絶対に道を譲らないドライバー……。知られざるインドがここに。

インドは一筋縄ではいかない

⑥手形のついた壁

アパートや個人の住居の外壁に各政党がシンボルマークやスローガンをペイントで描くのが普通だ。選挙ポスターの制度もないから、選挙期間中は多くの家の壁に政党のマークや講演会の案内が描かれる。

選挙が終わっても消されないものが多いため家の壁はそのままになっている。壁には商品広告が描かれているものもあるから、市中の壁で白いのは少ない。言い換えれば壁が汚れているのは当たり前の世界である。

インド人は壁をきれいにしようという意識がないのか(諦めているのか?)、政党のマークや広告以外の汚れもそのままだ。このためか外壁ではなく、アパートや事務所ビル内の階段でも、壁が汚れていようがお構いなしである。わざと汚したのかと思うほど高い位置に手形が付いていたりする。

荷物の運搬人等の手が汚れているのは分かるが、住んでいる子供も汚れた手で壁に触っている。インド人は自分の家の中はきれいにしようとするが、それ以外は無関心で、子供がアパートの外廊下の壁を汚しても母親は注意しない。壁は汚れ放題となる。