第2章 社会

届いた手紙

1通の手紙が届きました。
患者のAさんからです。近況と共に転居し当院での医療を受けられなくなった報告です。

化石医師が坂下に赴任したばかりの頃糖尿病の合併症による壊疽のため両足を失われた方を訪問診療しておりました。だるまさんの様な状態を見て「こんな方がいるのだ」と衝撃を受けたことを覚えています。それがAさんのお父さんでした。

その当時介護を担当されていたのがAさんのお母さんでした。お父さんに続いてお母さんの医療を担当し、お二人を看取った後Aさんの医療を担当したのは自然の流れでした。その後Aさんのご主人も化石医師が担当してきました。

振り返れば30年以上の付き合いになります。ご主人が特殊な病気になり治療のため娘さんの居住される地域の大学病院を紹介しました。その後継続して治療を受けられるため娘さん一家と同じマンションに部屋を借りたようです。こうしてAさんの家は空き家になりました。

同じ町に住んでいたSさんも独居です。心臓発作をきっかけに娘さん一家が居住する市にアパートを借りました。同市の循環器内科への受診と共に当院での医療もご希望されわざわざ電車に乗り通院されています。

Sさんとのお付き合いもお父さんの治療がきっかけでしたが、Sさんも最近町の家を引き払ったようです。また一人いなくなりました。お元気で通院されている間はあまり気づきませんが、伺ってみると地域では独居の方がなんと多いことでしょう。

「この方も独居。えーっあの方も独居なの」と思ってしまいます。まだご自分で通院される状態の時は良いのですが心臓疾患など身体機能が悪化すると地域での生活維持が困難になりAさん、Sさんのように転居されることになります。病気になっても安心して暮らせる地域づくりが望まれるところです。