手術は楽しい

東国(とうごく)病院の外科では、外科志望の研修医以外は、とりあえず1ヶ月間勝手に学んでください、という感じでほとんど相手にされない。実際、僕がここに来てから3ヶ月で3人の研修医が回ってきたが、3人とも気がつけば外科研修を終えて、今ではほかの科の研修に入っている。

外科研修中の彼らを手術室で見かけることすらほとんどなかった。ここではみんな自分が生き残るのに必死で他人を構っている暇はないのかもしれない。かくいう僕こそ人に構っている余裕はなく、研修医の指導などとてもできる状況ではない。

神谷君もおそらく静かにこの1ヶ月を過ごし、最低限の外科研修を終えて小児科医になっていくのだろう。そう思うと少しもったいなく感じた。

僕自身、外科志望ではなかったにもかかわらず、石山病院での外科研修で長谷川先生に手取り足取り指導していただいたおかげで、今ではこうして外科医としての一歩を踏み出しているという経緯がある。

研修医時代は、志望科はあってないようなものである。初期研修が始まる前と後で志望する科が変わるということはよくあることだし、いろいろな科をフラットな気持ちで研修して、自分の将来の可能性について見直すことができるというのは初期研修のメリットだと思う。