一冊の方には、性格診断テストが載っていた。恋人の相性診断つきだった。これが危なくない方だった。

もう一冊の方をぱらぱらとめくって、茜が、「あら、やだあ」と頓狂な声を出した。週刊誌の後ろの方には、ストリートで撮った女の子の写真が二十人ほども並んでおり、「処女当てクイズ」と書いてある。

昔からよくある男性週刊誌のノリである。なんとなく危険な香りの方に惹かれはするものの、男たちの手前、女性の方から危ない方がいいなどというわけには行かない。

みな、言葉に出すのをためらってもじもじしている。座がしらけかかって困ったな、わたし帰るなどと言い出されたらどうしようと村上が考えていると、意外なところから助け舟が出た。

隅のほうから小林が、「まあせっかくだから危ない方を選んであげてよ、中条が可哀想だからさ」とひょうきんに言ったのである。それに美咲がのった。

「せっかくだから中条さんの言うとおりにやって見ましょうよ。わたしたちこんなもの滅多に見ないんだから」

厳密に言うとこれは嘘だった。だが、場の流れはこれで作られた。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『百年後の武蔵野』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。