「ええ、それはフェラーラの絵にとって、全体構成を的確に表現する必要不可欠なものだと、私は思っていますから。しかし、この絵にはそれが見当たりません。ですから凄く上手な絵だとは思いますが、多少奥深さと言いますか、幾分物足りなさを感じやしませんか? それにコラージュですが、花は描かれていますが、幾何学的な細密画もありません。それに、もっと分かりやすいことが……」

「まあ何でしょう?」

「フェラーラが今まで描いた二十六点の女性の肖像画ですが、背景はすべて赤色なのです。でもこの絵は青色ですね。これも今までの絵とは違うのです」

宗像が解説しているとき、ロドア画廊の店主が、何かを抱えながら再び店内に入ってきた。

「お話し中ですがその絵に大変ご興味がおありのようですね。それではこれもご覧ください。この三枚の油絵です。女性の肖像画と一緒に、この三枚の絵も持ち込まれましてね。ええそうです、非常に腕の良い画家の作品と評価させていただきました。

お値段もまあまあでしたので、まとめて四枚全部を買い取らせていただいた次第でして。ほら、ご覧ください。肖像画の方はサインがございませんが、こちらにはサインがあります。ここに三枚とも、そら、A・ハウエルと。

肖像画にはサインがありませんので、サインを比べるわけにはまいりませんが、私共が拝見させていただいた限りでは、これらは全て同じ作家の作品ですね。絶対に保証しますよ」

※本記事は、2020年8月刊行の書籍『緋色を背景にする女の肖像』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。