第二章 日本のジャンヌダルク

「日本でいえば、明治維新は間違いなく革命です。フランス革命のように民衆が蜂起したのではないから革命とはいえないという人もいますが、それは表面的なことしか見ていない浅い捉え方だとわたしは思います」

「わたし、明治維新は革命ではなく、ただの権力闘争だったと書いている本を読んだことがあるんですけど……」まゆみが遠慮がちに口を出した。

「それは革命とはなにかという定義の問題だと思います。でも思想的な側面から見れば間違いなく思想革命、宗教革命だったといえます」

「宗教革命ですか?」沙也香は驚いて聞き返した。

「いきなりこんなことをいうと違和感があるでしょうね。じゃあ明治維新がどのようにして起きたか、経過を考えてみましょうか。沢田さんでしたね、あなたは歴史にくわしいとうかがいましたから、聞いてみましょうか。明治維新が起きる最初のきっかけはなんだったでしょうか」

「最初のきっかけですか。最初は……水戸光圀(みとみつくに)が『大日本史』を編纂したことかなあ」

「さすがですね。そのとおりです。さまざまな資料を集めて、日本国の歴史を編纂した『大日本史』が完成しました。その中にはどんなことが書かれていましたか」

「えっ、内容ですか。それは知りません」