第3章 世界のパラダイム

ビフォアコロナ アフターコロナ

12 物理的距離の消滅

私たちは、2019年から働き方改革を推進してきました。長時間労働による社会的弊害が目立ってきたことが直接の原因でしたが、何年経っても生産性が改善されない日本の労働慣行に大きな問題があり、日本人の働き方を見直し、労働生産性を先進国並みに引き上げようではないかというのがほんとうの目的でした。

企業は働き方改革法が成立したことで、労働時間の見直しに本気になって取り組み、労働時間を減らすことで、時間当たりの収益を上げようと努力しました。長時間勤務が常態化していた企業も、労働時間については、ずいぶん変わってきました。しかし社員を早く帰宅させただけで、仕事量をこなせないという企業もあります。

まだ企業の都合で、カタチだけの「労働時間のカイゼン」も多く見られます。しかし、どんなに働き方を見直しても、一つだけ大きな問題が残りました。それは移動時間です。業務中の移動時間です。

顧客と打ち合わせをするため、本支店の打ち合わせ、現場での打ち合わせ、指導、教育研修のための関係部署、ときには社員全員の移動時間について、時間を短縮することは不可能でした。議論の俎上にのることさえありませんでした。