第二章 過去の失踪

ショーは過去にも失踪したことがある。「ショー失踪」から二、三ヶ月前のことである。失踪と言ってもこの時は同じ建物内に居たので失踪とまでは言えないかもしれないが。

それは、ちょっと遠くのデパートに買い物に行った時のこと。妻が洋服のあるコーナー、私がショーを連れて本屋。いつもであったらショーの手を絶対離さないのだが、お気に入りの本に夢中になり無意識に手を離していた。

気がついたらショーが居なくなっていたのだ。また隣のフロアか、別の売場で「ひーひー」言って遊んでいるのだろうと思いそんなにも慌てていなかった。

だが、この日は簡単に見つけることができなかった。この時は私と妻二人いたので、手分けしてデパート中を隅なく探した。しかし、どうしても見つからなかった。

各階の店員さんにも、それらしき子供は居なかったか聞いて回ったが、そのような子供は見なかったという。探してから十五分位経っている。

もうデパートのめぼしい所は全て探した。だが見つからない。ため息まじりに「警察に探して貰おうか」と、どちらともなく呟いた。

「あっそうだ、探していない所があった」

妻は「どこどこ」とせっつく。

「トイレだ」

トイレは盲点であった。妻と私は『デパート内のトイレを全て探しても見つからなかったら、警察に捜索願い出すことにしよう』ということにし、早速探すことにした。妻は一階のトイレから、私は最上階の五階から、もちろん男性、女性トイレを問わず探した。