「診療関連死の届出制度の在り方」では、(1)診療関連死の届出を義務化。届出を怠った場合にはペナルティを科す。(2)届出先は主管大臣(厚労大臣を想定)。大臣が委員会に調査を依頼。(3)届出範囲は、医療事故情報収集等事業の「医療機関における事故等の範囲」と非常に広く設定されている。(4)全例届出。必要な場合には警察に通報。本制度の届け出と医師法第21条の届出の在り方について整理。これをみても明らかなことは、紛争部分の話であり、およそ「再発防止」とは無縁の論理である。

「委員会における調査の在り方について」(1)調査対象は、当面死亡事例。(2)遺族からの相談を受け付ける。医療機関からの届出がなくても、診療関連死が発生したおそれが認められれば、調査を開始する。

(3)個別事例の評価は地方ブロック分科会が担当。①解剖、診療録等の評価、遺族等への聞き取り調査を行う(施設内部にずかずか踏み込んで来るということである)。②死因、死亡等に至る臨床経過、診療行為の内容や背景要因、再発防止等についての評価・検討。③評価・検討結果を踏まえた調査報告書を作成(劣っている。標準的でない等の評価が記載される)。④調査報告書は遺族、医療機関へ交付。公表する。⑤遺族が理解しやすいよう配慮。などとある。これでは、紛争を煽るようなものであろう。

そのほか、「院内事故調査委員会」には外部委員を加えるとある。一方、「再発防止のための更なる取組」は空疎な内容である。「行政処分、民事紛争及び刑事手続との関係」との項目もあり、行政処分、民事紛争、刑事手続で医療事故調査委員会の調査報告書を活用できると明言。行政処分に調査報告書を活用とある。

個人に対する処分と医療機関への改善勧告等の仕組みを設ける両罰規定となっている。個人、医療機関ともに処罰するというのである。また、警察通報事例や遺族等からの警察相談時における捜査と委員会の調査との調整の仕組みを設ける。調査報告書は刑事手続で使用されることがあると明記されている。

上記の如く、第2次試案が描く仕組みは明らかに責任追及のためのものであり、民事、刑事、行政処分の全てに事故調査報告書が使われることとなる。これは行政権限の強化以外の何ものでもない。

この第2次試案で使われている「原因究明」「死因究明」の言葉は、責任追及の意味(糾明)で使われている。第3次試案・大綱案のルーツである第2次試案を見れば、当初から事故調査制度が目指していたものが責任追及であったことは明白であろう。

※本記事は、2018年12月刊行の書籍『未来の医師を救う医療事故調査制度とは何か』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。